SETI@homeの仕組み

 
 

●なぜ電波探査なのか?

 もし、地球以外の惑星に生命が発生し、高度な文明を築き上げるまで進化したとします。彼らも多分、自分たち以外に生命がいないか、考えるでしょう。そんな時、彼らは何をするでしょうか? 宇宙船を作って友達探しの旅に出る可能性もあります。
 しかし、仮に我々が非常に効率の良いロケットを作り、地球から一番近いアルファ・ケンタウリまで20年がかりで往復すると… それに必要なエネルギーは、100万戸以上の家が3000万年の間に必要とするエネルギーより多くなる事がわかっています。これはどう考えても効率の良い方法とは言えませんし、それに要する費用も莫大なものとなります。もちろん、我々の知らない科学理論が存在し、非常に簡単に他の星を訪問する事ができるようになる可能性は否定できないものの、今のところ、それは夢物語でしかありません。
 遠くの友人へメッセージを送る最も効率の良い方法に関して、異星人たちも我々と同じ結論に達するのではないかと思います。それは電波を使う事です。しかし、一口に電波と言っても、どの周波数を、どのモードを聞けば良いのでしょうか?

 

●何を聞けば良いのか?

 

 我々の周囲には、様々なノイズが満ちあふれています。その中には電子機器によるものもありますが、大気や水蒸気、地表などが発する熱雑音、恒星が発する銀河雑音など、自然環境に由来するものもあります。そして、その自然雑音のスペクトルを見てみると、1GHzから10GHz位の間に、比較的ノイズが少なく、静かな帯域があります。
 私たちを取り巻く宇宙の中で、もっとも単純かつ一般的な物質−水素(H)が励起状態から安定状態に戻るとき、余ったエネルギーを1.42GHzの電磁波として放出します。同様に水酸基(−OH)は1.62GHz付近の電磁波を放出します。この水素と水酸基が化合すると、H+OH→H
2O、水になります。そのため、この二つの周波数の間は、Water Hall(水の穴)という通称で呼ばれています。

 私たちの様な形の生命が発生し、進化を重ね、存在し続けるには水が必要不可欠です。もしも同じように水を不可欠とする生命が発生し、高度に進化すれば、彼らもこの「Water Hall」の存在に気付くでしょう。そして、「もし宇宙に自分たちと同じように水に起源を持つ知性体がいたら… 彼らとコンタクトするには、ノイズも少なく、『水』というキーワードも伝えられるWater Hallの帯域を使うのが一番合理的だ!」と考えるはずです。
 同時に彼らが合理的な判断をするのであれば、FMよりSSB、SSBよりCWの方が遠くまで飛ぶように、電力を狭い帯域に絞ってくるでしょう。また、さらに考えるならば連続送信ではなく、パルス性の信号を送ってくる可能性が高いと考えられます。
 受信できる可能性の高いものは、それだけではありません。私たちがテレビ放送や大出力の軍事レーダーなど、遠くの星まで届くような電波を使うようになって、すでに50年が経過しています。今、その電波は地球を中心に50光年の空間に広がっています。もし、地球外の生命体がSETI@homeの様なプロジェクトを始め、地球の存在に気付くとしたら… 彼らが一番最初に受信するのは、こういった地球からの「漏れ電波」かも知れません。そして、私たちがまず受信するのも、そう言った他の星からの漏れ電波の可能性があります。
 SETI@homeでは、1.42GHzを中心に、2.5MHzの帯域の中で、そのような信号を探しています。なお、この周波数帯は、電波天文学にとって非常に重要な帯域のため、一般の使用は禁止されています。

 

●データの収集

 SETI@homeのデータ収集には、プエルトリコにあるアレシボ電波望遠鏡が使われています。この電波望遠鏡はカルスト地形の窪みに固定された直径305mの反射板と、150m上空に吊り下げられた給電部からなっています。反射板は地面に固定されていて旋回できないため、給電部の方が弓形のレール上を動くようになっており、天頂から20度の範囲のものを「見る」ことが可能です。
 アレシボ電波望遠鏡は、非常に鋭い指向性を持っているのですが、そのビーム方向は地球の自転によって動いています。給電部を動かせば一つの箇所を観測し続けることもできるのですが、SETI@homeでは、めぼしい信号が見つかるまでは敢えて給電部を動かさず、全天をくまなく走査するようにしています。
 この望遠鏡で集められた生データは、一日分が大体35GByteのDLTテープ一本になります。アレシボ電波望遠鏡は高速のインターネット回線と接続していないため、収集されたデータは、テープに記録されてカリフォルニア州立大学バークレー校(U.C.バークレー)に送られます。

 

●データの分割

 

 SETI@homeでは1420MHz(1.42GHz)を中心に、2.5MHzの帯域を解析しています。しかしパソコン一台で2.5MHz幅のデータを解析するのは、どう考えても無理があります。そこで、これをSplitterというソフトで256の帯域に分割し、約10KHz帯域のデータにします。このデータ、107秒分をワークユニットと呼び、そのサイズは約0.25MByte(=250KByte)です。実際には、ワークユニットにデータ管理に必要な付加情報を付け加えるため、参加者が一回に受け取るデータは340KByteになります。なお分割する際、探すべき信号が二つに分かれてしまわないように、隣り合うワークユニットで少しずつデータが重複するようになっています。

 

●データの送付

 

 ワークユニットは、すべて、バークレーにある巨大なデータベースに登録され、どれが誰に送られ、いつ解析結果送り返されたかを管理しています。ワークユニットがあなたのところに送られると、データベース内のそのワークユニットには、他の人が重複して計算を行わないように「作業中」という印が付けられます。
 パソコンが解析を終了すると、スクリーンセーバーは設定(自動的に接続するか、ユーザーの許可を求めてから接続するか)に従って解析結果をバークレーに返りかえします。解析結果を受け取ったワークユニットには「解析済」の印が付けられ、参加者には次のワークユニットが送られます。
 もし、「作業中」という印がついたまま、解析結果が送られてこないワークユニットが見つかった場合はどうなるのでしょうか? この場合は「ユーザーに見捨てられた」と判断し、そのワークユニットを誰か別の人に送り、解析作業を続行します。

 

●データの解析

 さて、あなたが珈琲を淹れるためにコンピューターの前を離れると、その隙にSETI@homeスクリーンセーバーは、送られたデータの解析を開始します。
 先に述べたように、アレシボ電波望遠鏡は非常に鋭い指向性を持っています。そのビーム方向は地球の自転とともに動いているため、遠くからの信号を捉えても、それはたった12秒間だけです。その信号は6秒かけて大きくなり、6秒かけて小さくなります。その予想される信号強度の変化をグラフにすると、ちょうど教会の鐘のようなカーブ(ガウシアン・カーブ)を描きます。解析では、このようなガウシアン・カーブに沿って、増減する信号(連続波、パルスなど)を探していきます。
 まず、ワークユニット中のデータのレベルを、処理しやすいように平均化したあと、高速フーリエ変換で「意味の有りそうな信号」を探していきます。ただ、異星人からの信号が連続波なのか、パルスなのか、使用する帯域が狭いのか、広いのかも判りません。また、地球が自転、公転をしているように、異星人の星も自転、公転しているであろう事を考えると、信号には、お互いの相対速度に基づいてドップラーシフトがあるはずです。そのため、バンド幅、時間解像度、ドップラーシフト量のパラメーターを少しずつ変えながら、何千回も解析を繰り返します。

 

●データの解析

 残念ながら、これは確実に異星人からの信号だと判断できるものは、見つかっていません。しかし4月11日現在、484,778,222個のワークユニットが送り返されてきましたが、その中で、2,647,483,147個のスパイク、255,177,250個のガウシアン・カーブに合致する信号、268,567,210個のパルス、284,721,463個の3連続パルスが発見されています。

 

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 7n4iur@7n4iur.com

 


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